キュウリの血と肉

モッス・カプロョモール・エニスポラ

りんごジュースを飲みまくると気が狂う前に腹が狂う(本が出ますよ)

あした、恐ろしい本が出ます。青森県内でりんごジュースを134種類も集めて、写真を撮って、並べた本です。サークル・しらゆき創作工房の稲本海*1さんよりお誘いがあり、おがぴ*2さん・みくまりの計3人でもって制作委員会を結成しました。

この本には、各ジュースについて「製造者」「販売者」「見た目と味」の3項目が記されています。製造者と販売者はラベルに記載されていますから、それを見て書けばよいとして、問題は三番目の「見た目と味」です。缶飲料の場合、中身のジュースがどうであるか、パッと見では分かりません。コップに注ぐ必要があります。

味はなおさら。手元に味覚センサがなければ、味を知る術は飲む以外にありません。飲む必要があります。

で、飲みました。飲めるだけ。恐怖の試飲会が9月8日・19日・10月14日の3回に亘って行われました。

 

まずはジュースを買い集めなければなりません。制作委員で手分けして、なるべく広範囲に集めます。

これだけ買い集めても県域を網羅しきれていない

39MLは中弘南黒を担当。初回の試飲会が9月8日に設定されていたため、前日の7日に買って回りました。ちょうど青森県産業技術センターりんご研究所の参観デー*3と抱き合わせにできるのも好都合。黒石駅前でレンタサイクルを借りて転がりました。

おチャリで転がると、歩きで回るより範囲を拡げることができます。普段ならよいこと。しかし、今回に限ってはあまり喜ばしくありません。行きと帰りで荷物量に大きな差が出るため、本当に苦しい帰り道になります。しかもルート上、黒石駅へ戻るには長い上り坂を行く必要がありました。前カゴに10kg超を積載すると、もはや漕いでは登れません。同じような行いを目論んでいる人間、気をつけて。

食堂がラーショの激しい直売(黒石市花巻)

売店に並ばないジュースが大量に生えている点で、直売巡りは驚きの連続です。生産者がめいめいに拵えて出荷しており、普段見ない製品だらけ。農林漁業の6次産業化を推し進める中で、りんごジュースの製造・販売に補助金を出している事例もあり、ジュースたちはなかなか元気に生えています。同じ瓶に同じラベルを貼り、ちいこいシールだけ変えて様々な品種を販売する罠もあります。

鮮(田舎館村高樋)

そして、あまりにも種類があって買い切れません。よく吟味し、厳選して買う必要があります。結局、26点を買っておしまいとし、稲本さんのOUCHIへ向かいました。厳選して26点。これ以上買うと徒歩での輸送に支障をきたします。そう。徒歩。駅まで歩いたり、駅から歩いたりする必要があります。

輸送した品々を稲本ハウスで並べたようす

翌日、おが・カー🚘で試飲会場へ。3人目は荷物の一部と化して乗車。

制作委員が4人いなくてよかった

場所を予約して試飲会をやると発生する面白事件の一つに、「会場の入口にある"本日の催し物"の板に謎の文字列が掲示される」があります。お堅い雰囲気の文言が並ぶ中、明らかに異彩を放っていました。

!?

何らかの研修研究部会!何らかの教育課程の何らか!何らかの会議!ジュースの試飲会!何らかの研修会!講習会!すごい並び。

 

会場入り即試飲ではありません。飲む前に、表紙用の集合写真・一点一点の物撮りをする必要がありました。この日集まったジュースは96点。おかしい。集まりが良すぎる。試飲会のお誘いに対し、行けたら行くね~と返したジュースが一点もいません。

圧がすごい

集合写真の撮影はなかなか楽しい作業でした。収まりよくなるように、幅を調整したり、背の順に並び替えたり。問題はその後です。写っている全てのジュースを撮影しなければなりません。購入したジュースの一覧と照らし合わせて、番号を振る作業も同時に行います。ジュースを置く人、シャッターを切る人、番号を振る人の分業制。

 

96回これをやる

 

向かって右手の机からジュースを取り、決められた位置へ置き、撮影。撮り終えたら左手の机へ流します。

似たサイズのものをまとめて物撮りしたため、撮り終わったジュース群は綺麗に並んでいました。なんか道っぽくない?ということで録った動画がこれ☟。

youtu.be

ドンジャラ*4車載動画

このあと品種別に全部並び替えた

これで撮影の部は終わりました。いよいよ試飲に移りますが、その前に告知を挟みます。一体なぜか?もしこれを食事中ないし食事を楽しみに待っている状況で読んでいるならば、即座に閉じたほうがよいためです。記事タイトルをよく見ると「腹が狂う」とあります。腹が狂う話を食事中に読んではいけない。告知を見て、記事を閉じて、ごはんを食べ終えたのち、また読み進めたほうが幸せです。

 

■お知らせ

『青森りんごジュース約100点』は11月3日(明日!)開催のおもしろ同人誌バザールで頒布があります。B5判本文フルカラー・78pで頒価は1,000円。スペースは本館3階・お-15です。

うれしい!通販もあります。

■お知らせここまで

 

それぞれに記録用紙が配られ、試飲スタート。90mLのプラコップに注いで分配します。コンタミしないように、コップは1杯飲んだらそのままポイ。

これ全部飲むんですか!?

小瓶、小ペットボトルや缶であれば、だいたい200~280mLですから、ひとり頭60~90mL。時折はみ出しますが、100mLを超えることはそうありません。これなら、かなり楽そうです。

試飲会の序盤には実際そう思っていましたが、大事なことが思考からすっぽり抜け落ちていました。尋常でない種類のジュースが待機しているのです。100mL弱を何回繰り返しても終わりません。幸いにして、口腔は結構喜んでいます。りんごの味は嫌いじゃないし。他方、お腹は怒っています。今までに経験したことのないタイプの痛みが寄せては引き、寄せては引きを繰り返し、15杯を飲み終えたころ、おがぴさんがとうとう脱落しました。脱落の原因は、お腹の問題だけではありません。ジュースが冷えていませんでした。ぬる~いジュースを大量に飲むという行いは、人間にとって存外堪えがたいものなのかもしれません。

試飲会の後半は阿鼻叫喚の叫喚抜き。阿鼻*5。静か~に苦しむ3人。試飲・休憩・苦笑・ちょっとトイレ……・試飲・休憩・ちょっとトイレ……・苦笑・試飲・苦笑・休憩・ちょっとトイレ……

 

試飲会がお開きになった直後、未知の下痢。人間噴水。最強散水ノズル。発電したいくらい激しい下痢。

 

リンゴは水溶性食物繊維(ペクチン)を多く含んでおり、ジュースになるとこれがダイレクトアタック。しかも大量に飲んでいるとなればもう大変です。しかし、りんごジュースを腹痛なしに試飲するやり方が分かりません。

もう、腹痛は承知の上で飲む。そして、案の定お腹を痛める。試飲会そのものは回を重ねるごとに改善がみられましたが、試飲会後の腹痛については覚悟以外の解決策が見当たりませんでした。

 

結局、この日は27杯を飲みました。かなり健闘したと思います。3回あった試飲会のうち、最も多くの種類を飲んだのは初回でした。

様々な品種・生産者のジュースを楽しめること自体はすごくうれしい

 

11日後、9月19日。試飲会、再び。その間にトマト トマト トマト トマト

りんご りんご りんご りんご

また増えています。これでりんごジュース128点。前回と同様に、物撮りののち試飲会を始めます。

助けて!

恐ろしい。もう100点シリーズをはみ出しています。でも、大丈夫。本家・100点シリーズはもっとはみ出しています。

100点をヌルッと超えている

 

前回の反省を踏まえ、ジュースたちは冷えています。心ウキウキワクワク~

りんごジュースが 箱で冷えてる それが罠とも知らずに

これまた前回の反省を踏まえ、お口直しを増やしています。

黒石市大川原の蕎麦かりんとう

この回は、比較的穏やかに進みました。ジュースは十分に冷えていましたし、お口直しも種類が豊富でした。口中の単調さを解決するだけでこれほどまでに飲み進めやすくなるか、という感動すらありました。そう!飲み進めやすくなっていました。そしてジュースは十分に冷えていました。するとどうなるか!?

 

既知の下痢。11日ぶり。緊急放流。ケルヒャー人間。お腹ウキウキワクワク。その勢いで便器が壊れるのが先か、人間が大気圏を脱して壊れるのが先か。魂と魂のぶつかり合い。

 

確かに、りんごジュースの飲用にあたって、喉ごしを良くすることは重要ですし、実現のための手法として冷却は有効です。前回にぬるいジュースを飲んでギブアップの人もあったことを考えれば、冷やしておいた方がよっぽど良いでしょう。しかし、お腹は怒っています。また怒っています。先々週は食物繊維にさんざっぱら苦しめられたのに、加えて今度は冷えてるの!?正当な怒り。彼方立てれば此方が立たぬ。

 

23杯を飲み、前回と合わせて50種類を飲みきりました。手前味噌ながら、よくぞここまで3人でがんばったと思います。飲めなかった分を持ち帰って、手分けして試飲することで終わりとしたいところですが、強敵が立ちはだかっています。大瓶です。

試飲会では、残った液体の処理が困難であるため、開栓即完飲がルールとして定められました。ここまで飲んできたジュースたちは、いずれも内容量が500mL以下であり、3人で手分けすれば(少なくとも飲んでいる間は)楽に完飲することができました。

しかし、りんごジュースの主役は、直売所の主役は、大瓶です。直売所で売られているジュースは、もっぱら自家消費に回ることを想定しており、贈答用に何種類も見繕って買うようなものではないのでしょう。製造側としても、小さな瓶にこちゃこちゃと詰めれば手間がかかります。とかく何を買っても大きい。小物を倒した後に残された1L前後の瓶たちは、制作委員会の手に負えません。

 

そこで、10月14日に拡大試飲会を開催。3名の制作委員に加え、7名の腹痛覚悟人間ズが参加し、総勢10名で大瓶に挑みました。

ヒエ……

大瓶の多くが、密封に王冠を使用しています。これがここまで試飲に踏み切れなかった大きな要因でもあります。スクリューキャップであれば、少し飲んでも蓋をして持ち帰ればOK。対して王冠の場合、替栓で蓋をしたとしても、移動中に外れる恐れがあります。

“それ”が開いたら、終わり。

でも、10人いればなんとかなりそうです。実際なんとかなりました。1Lであれば、ひとりコップ1.5杯分くらいずつ飲むだけで済みます。よかった。

人数が増えただけで、かなり気楽になる

拡大試飲会の中で、とりわけ参加者の注目を集めたジュースは「SANNOHE PEAK 紅の夢」でしょう。果肉まで赤い品種「紅の夢」を使用している点はさることながら、720mLで2,800円という価格のインパクト。10等分して、プラカップ1杯で280円。

2,800円のジュースを見守る330円のポテト

実際2,800円出してもいい味がするのはすごい

すごい!大瓶を18本も空けました。引き換えに腹痛さんが来てくれましたが、大丈夫です。もはや「仕方がないもの」として覚悟が決まっています。最後に残ったジュースを分配して、3回に亘る試飲会は幕を閉じました。

 

なんだかりんごジュースがお腹に悪いように思えてくるような内容になってしまいました。これは異常な量を飲んだせいです。適量を飲むとおいしいし、食物繊維を適度に摂ることもできます。

この記事を書きながら、1日かけて280mLのりんごジュースを飲みましたが、すこぶる快調です。人間のみなさんも、りんごジュースは好きな商品を適量飲むと吉です。

好きな商品が分からない?そんな時には『青森りんごジュース約100点』が便利。青森県内で売っているりんごジュース・134種類の画像がひたすら並んでいるだけではなく、酸味と甘味の体感スコア(n≠1)や一口メモも載っています。これを参考に、気になるジュースを何本か買って飲み比べると、自分が好きな味の傾向が見えてくるかもしれません。(終)

 

 

*1:

https://twitter.com/Kai_inamoto

*2:

https://twitter.com/ai701_N7

*3:希望すれば実験圃場に誰でも立ち入れる神イベ

*4:ドラえもん』35巻収録「ドンジャラ村のホイ」に登場する村。ドンジャラ村の住民は小人族で、のび太たち大人族の親指ほどの身長。万能手綱と呼ばれる道具を動物の首に巻きつけて移動する

*5:原義〈阿鼻〉は八大地獄の最下に位置づけられる阿鼻地獄を指すが、ここでは誰も大声を出すことなく、表向き穏やかに苦しむさまを想像されたい